(漂う緩和マネー 日銀検証を前に:上)不動産は活況、偏る果実:朝日新聞デジタル

前例がないほど大量のお金を市場に流し、国内外を驚かせた日本銀行の大規模な金融緩和の開始から約3年半。円安・株高で景気を刺激する効果は薄れ、今は緩和のデメリットが目立ち始めている。

「今は地方銀行や外資系銀行がアパートローンに積極的ですよ。大手銀行とは金利や借りられる額が違います」。8月初め、横浜駅近くでの投資用不動産のセミナー。アパート経営で稼ごうとする約30人が熱心に聴き入っていた。講師の不動産コンサルタント剱持暁(けんもつさとし)氏は「将来不安を感じる世代が、老後資金のために不動産投資をする例が増えている」と話す。

都内で靴屋を営む男性(48)は6月、信用金庫から資金を借り、横浜市の新築アパートを約7600万円で買った。ワンルーム10室はすぐ満室になり、金利を払っても高利回りが計算できるとはじく。「いい副業になる」と期待する。

日本銀行は2013年4月からの大規模な金融緩和で金融機関から国債などを買い、大量のお金を市場に流し、経済を活性化させることを狙った。

効果が目立つのは不動産業界だ。銀行などの不動産業界向けの貸出残高は約68兆円で、緩和前より12%増えた。全業界への貸出残高の約465兆円、8%増より伸びが大きい。

住宅ローン金利は過去最低水準で、銀行同士の貸し出し競争が続く。地銀の支店長は「客を取られないように金利を下げ続ける、まさに消耗戦だ」。不動産経済研究所によると、不動産需要の増加や資材高騰で新築マンション価格は首都圏で2割も上がった。

しかし緩和マネーの勢いに陰りが見え始めている。

東京都大田区の「大谷造機所」。従業員10人で自動車や船のエンジンまわりの部品などを手がける。緩和直後は円安で自動車業界向け受注が増え、2600万円で新型機械を入れた。

円高傾向の今、受注は伸び悩む。金融機関から融資の誘いはひっきりなしだが、設備資金を借りる必要はなくなっている。

大手企業は16年3月期決算で過去最高益が目立ったが、円高や海外経済の変調で17年3月期は減収減益の見込みだ。投資意欲は鈍り、お金の流れは停滞し始めた。大谷造機所の大谷文雄社長(78)は言う。「アベノミクスの最初の花火は大きかった。でも、もう消えかかっているのではないか」

■日銀が大株主、ゆがむ市場

景気に停滞感が出る中、緩和マネーが存在感を増すのが金融市場だ。

8月4日午後、都内の中堅証券会社のトレーディングルーム。午前中は下がっていた日経平均株価が100円ほど上がり「きたっ、日銀だ!」と声が上がった。終値は前日比171円高。トレーダーは「日銀の買い支え効果だ」という。

直前の7月29日、日銀は追加緩和で、株価指数に連動する上場投資信託(ETF)の買い入れを年3・3兆円から6兆円へ倍増させた。市場では「日銀のETF買いで下げ幅が縮まる」との見方が広がっている。

日銀が買うのは、日経平均などに連動するETFとされる。ETFは日経平均などの構成比率に応じて株式を買い集めてつくられ、ETFが買われれば株価が上がりやすい。

ゆがみも見え始めた。ETFを通じて日銀が実質的に大株主になる企業が増えている。ニッセイ基礎研究所によると、日銀が時価総額の5%以上を持つとみられる企業は、東証1部で27社。最も高いのはiPhone(アイフォーン)向け部品で知られるミツミ電機で11・2%。「ユニクロ」のファーストリテイリングは9・0%だ。日銀が買い続ければ1年後は16・5%になるという。

日銀の保有が多いとされる企業の関係者は「今は助かるが、いつか売られれば、株価が急落しないか」と戸惑う。同研究所の井出真吾氏は「日銀は力ずくで株価を押し上げ、市場をゆがめている」と指摘する。

株式売買で過半を占める外国人投資家は東京市場から手を引きつつある。代わりの買い手が日銀だ。株式市場には企業の経営を監視する機能がある。株価はそれを反映した「経済の体温計」だが、もはや適正な体温がわからない状態だ。

■デフレの足音も

日銀は13年4月、「2年程度で物価上昇率を2%に上げる」と宣言した。しかし今はマイナス0・5%(生鮮食品を除く)だ。

「金融政策の恩恵はうちには感じない。ひとごとという感じ」。都内の会社員の女性(30)は話す。夫(31)と長男(1)の3人家族。共働きで手取り計約43万円で、住宅ローン、保育園代や他の生活費を払ったうえで貯蓄も欠かさない。「年金や教育費など将来不安が多すぎる。消費を増やす発想にはならない」。スーパーでは特売品を探し、衣類はたまに量販店で買う程度だ。

緩和後の円安で企業収益は持ち直し、景気回復への期待が強まった。14年春闘では大手企業のベースアップも相次いだ。14年3月の物価上昇率は1・3%。消費増税があっても、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は「経済の前向きな循環は維持される」と自信を見せた。だが15年以降、物価上昇率はゼロ%前後が続き、今年3月からは5カ月連続マイナスだ。

増税後の消費を支えた訪日客の「爆買い」は一段落し、小売りの業績は伸び悩む。吉野家は牛丼より安い「豚丼」を復活させ、ダイエーは330品目の値下げを決めた。かつての「デフレ」のような動きだ。

日銀は物価上昇に向けて、(1)円安・株高で企業業績を回復させ、賃上げを促し、消費を増やす(2)人々にモノの値段が上がると予測させ、早めに消費するように促す、という二つのルートを想定した。

実際は賃上げの動きは鈍く、将来不安もあって消費は増えていない。目標を達成できなかった日銀は今後どうするのか。日銀OBは「今の緩和の枠組みはもはや行き詰まりつつあるのではないか」と懸念する。(藤田知也、真海喬生、土居新平)

■緩和検証20日から

日銀は20~21日の金融政策決定会合で緩和策の「総括的な検証」を行う。黒田総裁は物価が上がらない理由に、(1)原油価格下落(2)消費増税の影響(3)海外経済の低迷、を挙げる。デフレが続き、モノの値段が上がりにくいとも言う。検証はこうした分析とともに、政策効果も強調する内容になりそうだ。

日銀が金融政策決定会合で行う検証を前に、問題点を3回にわたり報告します。次回から経済面に掲載します。

日銀が思い描いた政策効果と現実


日銀の「黒田緩和」から3年がたった/最近の消費者物価指数は、マイナス圏だ

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12555640.html

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About Uy Do

Banking System Analyst, former NTT data Global Marketing Dept Senior Analyst, Banking System Risk Specialist, HR Specialist
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