過大なリスク投資、広がる SMBC日興・森田長太郎氏:朝日新聞デジタル

http://digital.asahi.com/articles/ASH3Z74FNH3ZULFA040.html
■金融政策 私の視点

――日本銀行の大規模な金融緩和が始まって2年が経ちます。政策の効果をどう見ていますか。

金融政策 私の視点
「株式市場に与える効果はこのところ鮮明になっている。ただし、原油価格の影響をかなりの部分除いたベースの消費者物価指数で見ても、物価は2年で2%に全く到達していないのは客観的事実だ」

「物価は世の中の需要と供給の差を表す『需給ギャップ』と、人々が物価が上がると考える『期待インフレ』で決まる。需給ギャップは一部の建設労働者が人手不足だとはいえ、消費増税の影響で需要が落ち込み、今年度マイナス成長にまでなることから見ても、過去物価が2%だった頃の需給の差よりもまだ緩い」

――日銀は国債などを買って資産を積み増し、人々の抱く期待インフレを高める経路も重視しています。

「期待インフレを通じた経路も実現していない。そもそも非常にあやふやな経路だったが、事実として否定されてきている。人々は物価を予想する時、予想が先に高まるのではなく、逆に過去の水準を参考にするものだ。日本の消費者物価指数は長い間2%に行っていない」

「日銀法は日銀の独立をうたっているのに不思議な話ではあるが、大規模な金融緩和はアベノミクスの一つのパーツだ。政府がインフレ目標を重視しなくなれば2年程度で2%という目標について、微修正が行われることになるだろう」

――国債を大量に日銀が購入する政策だけに、副作用についても指摘されています。

「国債市場では多くの参加者がそれぞれの判断に基づいて売買を行うので、国債価格と金利が自然に正しい予測を反映したものになる『価格発見機能』があった。だが、日銀が大量に買っているので、誰もそれに逆らって売買せず、市場機能が大幅に低下している」

「日銀はこうした政策をやっている以上、『市場に一時的な混乱があるのはしょうがない』『証券会社が勝手に言っているだけだ』と言うかもしれない。ただ、それが一時的な混乱なのか。長い時間をかけて作ってきた市場の価格発見機能を一度壊してしまった場合、将来回復できるかどうかわからない」

――国債暴落の可能性は。

「長期金利は物価上昇率に連動する。物価が上下に激しく動けば、長期金利も上下する。だから通貨価値が暴落し、インフレが進むことによって国債金利が上がり、国債価格が暴落する可能性がある。ただ、日本は対外純資産が豊富な国家で、外貨に対しての日本円の価値が暴落することはありえない。むしろ、国内で起こる自律的なインフレが引き金になる恐れがある。それは日銀の金融緩和に乗じて政府が財政を拡大させるマネタイゼーションが起きる場合だ」

――消費増税が延期されました。これによってマネタイゼーションの危険性は高まったのでしょうか。

「実際に財政が緩みつつある状況はあるとは思う。ただ、今回の場合は増税を延期するというところまでだ。決定的にマネタイゼーションになるのは緩和に乗じて政府が財政を拡大させた場合だ。社会保障費は年々増えているが非常に緩やか。景気拡大による税収増と比べると、この先も財政収支がどんどん悪化する状況ではない」

――では、マネタイゼーションによる国債暴落の危険性は少ないと見るべきでしょうか。

「それでも一つのリスクとしては、義務的に財政拡大をせざるを得ない場合がある。それは戦争だ。成長が止まってきたという世界経済の大きなトレンドを背景にグローバリゼーションが反転し、最終的にはブロック経済に向かう可能性もある。それで日本周辺での紛争の勃発や、日本との経済関係の強い地域での地政学リスクの顕在化といった事態も考えられなくはない」

「基本的には戦争がなければマネタイゼーションは起きず、インフレは起きないと思う。であれば、国債が暴落すると言い続けることは、『オオカミ少年』であり続ける可能性は高いとは思っている」

――マネタイゼーションが起きる可能性が少ないとすれば、日銀の金融緩和のリスクは何ですか。

「この政策の最も重要な効果は、日銀が長期国債のリスクを吸収しているという点だ。問題はその過程で起きることだ。先ほど、ある株式投資家と話していたが、今はリーマン・ショック前のヘッジファンドのように、他人のお金を使って実力以上にリスクを取って投資をすることはあまりないから、日本で起こっている株や地価の上昇はバブルではないと言っていた」

――日銀も今はバブルではないという認識です。

「いや、今はヘッジファンドと同じ役割を日銀が果たしている。日銀が国債を買い込んで金利を下げれば、投資家はその分、それまで以上のリスクをとって投資ができる。日銀が先導して市場での買い占め、言い過ぎかも知れないが価格操作をしている。当然色んな所で大きすぎるリスクをとる行動が少しずつ起こっている。それが加速する結果、ITバブルの崩壊やリーマン・ショック、90年に崩壊した日本株バブルに類することが起こるかどうかが問題だ」

――2年程度での物価目標の達成が難しいとなれば、日銀は大量の国債を買い続けることになります。そうなれば、リスクを取る活動は加速しそうです。

「ヘッジファンドはリスクを取りすぎてリーマン・ショックを起こして崩壊した。でも、中央銀行は公的機関なので最後の最後まで崩壊しない。こうした政策は永遠に続くという前提なら、バブルが崩壊しないと言えるかもしれない。一方で、市場原理に基づいていないので、いつかより強烈に崩壊するという議論も成り立ちうる。さらには市場を崩壊させられない場合、政府が市場そのものを閉じてしまう可能性もある」

――金融政策の効果が少ないとすれば、今日本経済に必要な政策は何ですか。

「日本は人口が減っていくので、経済を成長させるには生産性を最大限上げる必要がある。つまり、産業の競争力をより高める政策が必要だ。規制緩和でできることは多いと思う」

「農業政策は典型だ。非生産的な兼業農家が多い状況を変える必要がある。飛行機から見れば欧州と日本の農地の風景が違うのにがくぜんとする。日本の農地にはものすごい家がたくさんあり農家あたりの耕地が少ない。これでは生産性が上がるわけはない。一方、欧州ではきっちり整地された農地が広がっている」

「今回の農業改革は中途半端な結果に終わった。既得権益を奪うと思われれば自民党は動かないだろう。ならば農業改革を環境政策の一環として進めるという考え方も必要ではないか。超過密な日本の国土で農業生産の効率性をなかなか上げられないという状況を、人の住み方や都市構造、農村構造すべて含めて変えることが必要だ」

もりた・ちょうたろう 1963年生まれ。慶大経卒。ドイツ証券、バークレイズ証券などを経て2013年8月からSMBC日興証券チーフ金利ストラテジスト。(聞き手・福田直之)

SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジスト=福田直之撮影

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About Uy Do

Banking System Analyst, former NTT data Global Marketing Dept Senior Analyst, Banking System Risk Specialist, HR Specialist
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