原油安理由に緩和、不必要 伊藤隆敏・コロンビア大教授:朝日新聞デジタル

http://digital.asahi.com/articles/ASH167VJ4H16ULFA04C.html
■金融政策 私の視点

――物価目標を早くから提唱されていました。日本銀行の物価目標はデフレ脱却に効果が出ていますか。

金融政策 私の視点
「効果は出ている。物価は2013年3月のマイナス0・5%から昨年5月には1・4%まで上がったのは相当な成功だった。原油安の影響がなければ、今でも物価上昇率は1~1・5%の範囲にあると思う」

――それでは、日銀の目標通り13年春から2年程度で物価目標を達成することは可能でしょうか。

「2%に近づいていくとは思う。だが、そもそも2・0という数字をヒットする必要はない。一番重要なのは人々に毎年2%物価が上がると思ってもらうことだ。人々の予想が2%で安定することが重要だ」

「日銀も2年の期限は気にしていないと思う。2年が2年半になっても3年になっても、物価が順調に上がれば責任問題や約束を破ったとはならないだろう」

――著書では資源高の要因で目標を外した場合に中央銀行は責任を逃れられると書いています。原油安による物価下落に直面した日銀にも言える話ですか。

「全くその通りだ。エネルギー価格が上がっている場合には、一瞬インフレ率が3%になっても金融を引き締める必要はない。なぜなら、エネルギー価格は一時的で永久に上がらないからだ。高止まりしても1年で落ちるし、バブルもいつかは崩れる。同じことを今の日銀に当てはめれば、原油価格が1バレル=40ドル台まで下がっても長続きしない」

「原油価格が下がったというのは想定外だし、永久に続くものでもない。2年で2%が達成できなかったとしても、政策の失敗にはあたらないと説明できる」

――目標達成を追い求めてきた日銀には難しい選択になりそうです。

「時間こそかかるが、原油安は経済が活発になって雇用が改善して、賃金が上がる。実は日銀は原油価格が下がることによる物価下押し圧力はそんなに心配していないと思う」

「日銀は生鮮食品を除いた消費者物価指数で物価の傾向を見ている。だが、本当は価格変動の激しいものを外してトレンドを見るなら、生鮮食品だけでなく、エネルギーも除いた基準を見るべきで、この基準を使ってうまく説明することが必要かもしれない」

――ただ、昨年10月末の追加の金融緩和は原油安が物価見通しに与える悪影響を防ぐための緩和でした。

「あの時、あえて原油価格を持ち出して緩和する必要はなかった。今回、もっと原油価格が下がったからさらに緩和するのではないかと思われてしまった」

――再び追加緩和をして、目標達成にこだわるという選択肢もあります。

「追加緩和はしたばかりだから、まずは効果がどれくらい出てくるのかを見ないといけない。だから、再度の追加緩和はしばらくはないだろう。そもそも、1年もたてば、物価の前年比で見た場合の原油安の影響はなくなるのだから、原油価格の下落に反応してさらに追加緩和する必要はない」

「昨年10月末は、昨年4月に1・5%までいった消費者物価が、1%を割りそうになり、手を打たないと日銀の物価目標への信頼がゆらぐ恐れがあった。原油価格が下げ止まったまま推移すれば、物価はいずれ上がる。1%未満から上がって行くときに、上がり方が遅いからといって再び追加緩和をすることはない」

――人々が毎年物価が2%上がると思うようになるには何年かかりますか。

「3、4年かかるかもしれない。人々が長期的には2%に物価上昇率が落ち着くと信じるようになって、数字に表れてくるようになるにはそのくらいかかる」

――その間は金融緩和を続ける必要はありますか。

「米国が決めたように、追加の資産購入はやめるが手持ちの資産の規模は維持する方策がある。その場合は規模は維持するのだから、まだ金融緩和を続けている、というメッセージを打ち出す必要があるだろう」

――安倍政権は景気低迷を理由に2度目の消費増税を延期しました。昨年4月の消費増税による景気低迷が大きく影響しました。

「昨年4月に消費増税をし、駆け込み需要の反動で景気の低迷が起きたことは、想定の範囲内だった。第3四半期の数字が悪すぎた。しかし、こうしたことから、消費税はこれからも上げられないよね、という議論に結びついくと、どんどん増税が遅れて、その帰結は財政破綻(はたん)となる。だから、ある程度の成長率が確保されていれば、予定通り増税したほうがいいと思うのは、今も変わっていない」

――消費増税を実施するかどうかの参考に、安倍晋三首相が意見を聞いた有識者には、増税の延期に慎重な人もいました。

「もし景気が思うように回復しなかったりすれば、延期は意味があったのだろうか、となる」

――一方、延期を主張する人もいました。

「景気がすごく良くなったり、税収が増えたり、年金関係の社会保障支出を抑えるようなことができたり、つまり、少しでも財政赤字が減るなら、延期して良かったと言えるもしれない。良きにせよ、悪きにせよ、どうなるかは2、3年経ってみないとわからない」

――日銀の金融緩和で金利が下がり、政府が借金をしやすくなったので、放漫財政につながりませんか。

「理論的にはそうなる。ただ、政府は財政の規律を守り、日銀は追加緩和で経済成長に貢献するというのが最善のシナリオだ。放漫財政につながる可能性はあるが、そこは政府がきちんとすればいい。放漫財政の恐れがあるから金融緩和をしてはいけないという批判に、私はくみしない」

――それだけに、政府は財政健全化に気をつけるべきだということですか。

「日銀がここまでやっている以上、責任転嫁はできない。次は政府の番だ。国会を含めた政府がきちんと全員一致で財政再建に取り組まないといけない」

「このままでは今の世代のツケを先の世代に送り続けることになる。どんどん国債の利払い費や償還のための費用は増え、自由に使えるお金がなくなる。人口も減り、一人あたりのツケも大きくなる。世代間の不公平が大きくなり、政府も簡単に借金ができなくなるかも知れない。最終的には、財政危機を防ぐために大増税が避けられなくなる。それを防ぐために、小さな混乱が起きるにしても、少しずつ財政再建に取り組もうということだ」

いとう・たかとし 1950年生まれ。ハーバード大大学院経済学博士課程修了。大蔵省副財務官、東大大学院経済学研究科教授、政策研究大学院大教授などを経て、2015年から米コロンビア大国際・公共政策大学院教授。(聞き手・福田直之)

伊藤隆敏・米コロンビア大国際・公共政策大学院教授=福田直之撮影

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About Uy Do

Banking System Analyst, former NTT data Global Marketing Dept Senior Analyst, Banking System Risk Specialist, HR Specialist
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