マイナス金利「ここまで来たら撤退難しい」池尾慶大教授:朝日新聞デジタル

http://digital.asahi.com/articles/ASJ2B45W6J2BULFA00V.html
■金融政策 私の視点

金融政策 私の視点
日本銀行は16日から、金融機関が日銀に預けるお金の一部にマイナスの金利をつける「マイナス金利政策」を始める。日銀は、この政策が「経済活動に好影響をもたらす」(黒田東彦(はるひこ)総裁)と効果を強調するが、金融市場の反応は厳しく、政策への評価はまだ定まっていない。日銀の大規模な金融緩和策に懐疑的な立場をとってきた慶応大学の池尾和人教授に、この政策への見方をきいた。

――日銀のマイナス金利政策は、社会にどんな影響をもたらしますか。

「大きく二つある。ひとつは為替相場に与えるインパクトだ。マイナス金利政策は、海外の金利水準が一定だとすれば、日本と海外との間で金利差が開いて、円高圧力を減殺できる。だが、米国の利上げペースが当初の想定より遅そうで、日米の金利差がなかなか広がらない。だから、円安にするという効果はキャンセル(相殺)されたと言っていい」

「もうひとつは、金融仲介の機能を持つ銀行への影響だ。国債の利回り低下で銀行の貸出金利も下がり、銀行の収益が悪くなる。もうからない銀行はリスクを取りづらくなる。大企業はいいが、信用力の低い中小企業にお金を貸せない環境になるのではないか。日銀は、銀行が日銀に預けるお金の一部にマイナス金利をつければ、銀行が損するのを嫌がって貸し出しが増えるというが、むしろ銀行がビジネスを収縮させようという動きもあり得る」

――多くの銀行は、早くも預金金利の引き下げに踏み切りました。

「銀行がコストを預金者に対して転嫁するというのはビジネス上、仕方がない部分もある。ただ、全部は転嫁できないので、やはり銀行の収益は悪化する。銀行は預金をあまり集めたくなくなるだろう」

「日本では顧客離れを招きかねないので、口座維持の手数料を導入するのは難しいだろう。だが、各種の手数料の徴収強化はあり得ると思う。ATMでお金を引き出す際の手数料や、自行内で別の口座にお金を送金する際の手数料などだ」

――長期金利が9日、史上初めてマイナスになりました。どんな影響がありそうですか。

「少しぐらいゼロを切っても、世界がすぐ変わることはない。幸か不幸か資産価格の変化に対する、実体経済の感応度は鈍い。国債は信用力が高いので、金融機関などがお金のやり取りをする際に担保として使っている。若干のマイナスなら、まだ金融機関が国債を保有するメリットがある」

「だが、そのメリットを超えて、マイナスが大きくなるようだと、世界は違ってくるかもしれない。例えば、仮にもうからなくなった銀行が預金口座に手数料をかけるようになると、預金者はお金を銀行に預けるのを嫌がり、預金口座を通じて電子的に決済せず、わざわざ現金での決済をするようなるかもしれない。それは、これまで築き上げてきた文明を破壊する『退化』の世界だ」

――これまでの大規模緩和も含めて、日銀の金融政策をどう評価しますか。

「率直に言って、今の日銀の金融政策の方向性には疑問を感じている。黒田総裁は『金融政策には限界はない』と言う。だが、私は金融政策には限界があると思う。実際に政策を担当している人は『限界だ』と言えないとしても、政策金利をゼロに下げた時点で限界だ。もう3年も2%の物価安定目標の達成はできておらず、大きな路線の破綻(はたん)は隠しようがない」

「マイナス金利政策の導入は、『金融政策にできることはまだある』ということを日銀が示しただけ。だが、『できること』と『有効な方策』とは別だ。そもそも、黒田総裁は『戦力の逐次投入はしない』と言っていた。マイナス金利政策が有効な方策なら、いままでやってなかったのはおかしい」

――金融政策で「期待」を高める効果はありそうですか。

「中央銀行が本気を見せれば期待を変えられると言うのは傲慢(ごうまん)な感じがする。これまでの円安・株高も、安倍晋三首相が当時の閉塞(へいそく)感を打破しようとしてくれるという期待をきっかけに進んだが、貿易収支が赤字化したことなども大きい。日銀の金融政策の効果なのかは疑問だ」

「これまでの大規模な金融緩和も結局、銀行が持っていた長期国債を、銀行が日銀に預けるお金として入れ替えていただけ。それで実体経済にどれだけ効果があるのか。期待が大きく変わるという『レジームチェンジ』を起こすほどの変化はなかった」

――結局、成果は上がっていないと。

「短期決戦で思い切ったことをやり、人々の期待を変えるという当初のシナリオが実現していない以上、作戦は失敗だろう。失敗が明らかになった時点で大きな路線自体を見直さなければいけなかった。だが、金融市場には金融政策への過度な期待を持たせてしまっている。むしろ『金融政策でいろんなことがやれる』という強気の姿勢を貫いたため、逆に市場から追い立てられるようにして打った一手が今回のマイナス金利政策だ」

――では、どう見直して行けばいいでしょう。

「ここまで来ると見直しさえも難しい。市場が金融政策に過度な期待を持ってしまったので、撤退を言いだせば、どんな反応をするのか見通せないからだ。マイナス金利政策の導入の際に、『3次元で金融政策が打てるようになった』と強がるのではなく、これまでより国債を買う量を少なくするなど、量的な金融緩和の面での見直しをセットにして、作戦の修正につなげるべきだった」

――そんななかでできることはあるのでしょうか。

「経済が好転するまでは、とにかくゼロ金利政策を続けていくという姿勢を堅持するしかない。それ以上のことができるかのようなふりをしたから、いろんな問題が起きている。日本に限らず、世界中の中央銀行がいま陥っている状況だろう」(聞き手・福田直之、久保智)


インタビューに答える池尾和人・慶大教授=東京都港区、久保智撮影

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About Uy Do

Banking System Analyst, former NTT data Global Marketing Dept Senior Analyst, Banking System Risk Specialist, HR Specialist
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