[FT]正確さを欠く米国務長官のアジア民主主義論

(2012年7月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 クリントン米国務長官は今週モンゴルで行った中国についての演説で、「中国」という言葉を一度も使わなかった。一方、「民主主義」という言葉には48回も言及した。

 

■この5年で民主化が進んだアジア

モンゴルのウランバートルで演説するクリントン米国務長官(7月9日)=AP
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モンゴルのウランバートルで演説するクリントン米国務長官(7月9日)=AP

 クリントン氏の演説内容にけちをつけようというのではない。同氏が個人の自由や表現の自由、個人の信条に対する迫害からの自由のために立ち上がったのは正しい。アジアの一部では残念ながら欠如している女性の権利を強調したのも正当だ。

 一部のアジア諸国での民主化の進展を指摘したのも的確だった。長官は、アジアではこの5年間で他のどの地域よりも民主化が進んだという米国の人権団体「フリーダムハウス」の分析を引用した。エジプトからは異論が出るかもしれないが、アジアの数カ国が民主化に向け重要な手段を講じたことは間違いない。一目瞭然なのはミャンマーだ。政治犯が釈放され、報道規制は緩和。民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チー氏が率いる野党、国民民主連盟(NLD)は連邦議会補選への参加を認められ、勝利を収めた。

 クリントン氏が民主主義とは「アジアの価値観と相反する」という考えを批判したのは理にかなっている。韓国や台湾の堅強な民主主義が証明しているように、この考えは全くのでたらめだ。

■民主主義が経済成長をもたらすわけではない

 一方、クリントン氏は経済的な繁栄と政治の自由度には密接な関係があると主張するなど、根拠が曖昧な点もあった。日本や韓国、インドネシア、台湾を「素晴らしい経済的恩恵をもたらした民主主義社会」の例に挙げた。だが、米占領軍により民主主義を強制された日本を除けば、これらの国の経済は独裁政権下でも民主主義への転換後と変わらぬ急成長を遂げた。中所得国になった後に民主化が進んだ韓国や台湾の場合には、経済的な恩恵により民主主義がもたらされたとの見方もできる。

クリントン氏が持ち出した因果関係は希望的観測によるものだ。北朝鮮やミャンマーは経済が破綻した独裁主義の例だが、中国は一党独裁体制でも経済成長率は世界で最も高い。フィリピンは民主主義の象徴だが、経済的には期待外れだ。フリーダムハウスの評価では「部分的に自由」な国にとどまっているシンガポールは、国民1人当たりの所得が購買力平価換算で6万ドルとアジアで最も高い。クリントン氏が訴えようとした民主主義と女性の権利との相関性も単純ではない。生む権利を(明らかな)例外とすれば、中国の女性はアジアの大半の国の女性よりも男女同権を求めることが許されている。

■中国でも拡大しつつある自由

 クリントン氏は演説で中国を名指しはしなかったものの、「国民の意見や情報に対するアクセスを制限し、自らの意見を主張した罪で拘置し、国民が指導者を選択する権利を奪う」ことに取り組んでいる独裁政権に触れた。これは、どの国を念頭に置いているか明らかだった。中国はあらゆる点で当てはまり、かつ非難に値する。

 だが、クリントン氏の発言は中国で拡大しつつある自由の意味を捉えていない。情報へのアクセスや旅行の自由、一定の問題に抗議する自由など多くの点で、現在の中国は20~30年前とは別世界だ。フリーダムハウスは毛沢東時代の中国も現在の中国も「自由がない」と判断するだろうが、クリントン氏はもっと微妙な違いがあることに気付くことができるはずだし、そうしなくてはならない。民主主義と同様に独裁主義にも幅がある。クリントン氏は次の演説では中国の名前を挙げ、もっと正確に意図を語るべきだ。

By David Pilling

(c) The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

2012/7/12 14:00

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV12002_S2A710C1000000/

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About Uy Do

Banking System Analyst, former NTT data Global Marketing Dept Senior Analyst, Banking System Risk Specialist, HR Specialist
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