インドネシア共和国~自立するアジアの巨大消費地

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
国際事業本部 グローバルコンサルティング部チーフコンサルタント
澤村 隆之 氏
三菱UFJリサーチ&コンサ
ルティング株式会社
国際事業本部 グローバ
ルコンサルティング部
チーフコンサルタント
澤村 隆之 氏

インドネシアは東西に長く、世界最多の島しょ(推計約18,000島)を抱えるASEANの大国である。人口は2億3,000万人を超え、現在も増加傾向にある。特に首都ジャカルタは、中心部に高層ビルが建ち並ぶ世界屈指のメガシティとして、外国企業が多く進出。工場立地のみならず、消費財市場としても注目されている。国民1人あたりのGDPは3,000USドルを突破しアジアでは中国に次ぐレベルに達していることが、活発な消費を支える要因となっている。

■寛容なムスリムの国

島の数を政府ですら把握しきれていないとされるほど、多数の島々で成り立つインドネシアですが、経済成長の面ではジャカルタなど一部の都市に産業活動が集中しているのが実情です。ジャカルタ以外では、古くから港湾が栄え貿易都市であるスラバヤ、初代大統領スカルノが卒業したバンドン工科大学があることで有名なバンドン、シンガポールに近いスマトラ島のメダンなどが今後ビジネスを展開する上で注目の都市となりつつあります。

韓流スタイルを宣伝するヘアサロン
(ジャカルタのショッピングモール)
(出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2011年11月

韓流スタイルを宣伝するヘアサロン
(ジャカルタのショッピングモール)
(出所)三菱UFJリサーチ&コン
サルティング 2011年11月

イスラム教徒が国民の9割近くを占め、人口ベースでは世界最大です。ただ、イスラム教の国といっても、中華系の民族も一定数おり、彼らが企業のトップであるケースも多いので、ビジネス社会ではイスラムの教義が幅を利かせているわけではありません。実際、1日5回のお祈りを3回にまとめるムスリムもおり、特に都市部は仕事のペースに生活を合わせているようです。従って、日本企業が進出して現地で雇用したり、日本人社員が同僚として現地社員と共に働いたりすることにそれほど違和感はないはずです。その点、アジア圏のムスリムは総じて柔軟と言えるかもしれません。

政治的にも、現ユドヨノ政権は少なくとも2014年まで続くとみられており、政策的に大きな変更はないとされています。外資の進出にも寛容な姿勢をみせており、良い経営システムは自国にとり入れていこうというスタンスです。民族が多様であるゆえの内紛や米国をターゲットにしたテロのリスクもありますが、最近は比較的落ち着きを見せています。

■企業進出にインフラの課題

課題もあります。特に物流インフラの整備はまだ十分とはいえません。日本企業の多くはジャカルタおよびその周辺に立地していますが、国内輸送の9割を担う道路は、すさまじい渋滞が日常の風景となっています。舗装率も全国では6割程度です。市内に地下鉄はいまだなく、日本もODAで導入の支援をしていますが、地権者の合意形成ができないなどハードルが高いのが現状です。この渋滞を避けるために、例えば食品製造工場の近くに物流拠点を設置するなど、なるべく移動時間を短くする工夫をしている大手コンビニチェーンもあります。この問題は製品物流面の非効率性だけでなく、大気汚染など環境面はもとより、現地生活者や観光客のスムーズな移動を妨げかねない側面と言えます。

通信インフラは、離島が多い環境も反映して固定通信よりも携帯電話サービスが先に整備されつつあります。携帯電話からインターネットへの接続がインターネット接続の5割を占めている状況です。携帯電話端末は中古品が流通し、さらに地元メーカーがブラックベリーと機能が似た携帯端末を日本円で約10,000円以下で販売するなど、若い世代にも普及が進みやすい環境になっています。

金融に目を向けると、1997年前後のアジア通貨危機以降、国内の銀行は再編が進み、インドネシア中央銀行によれば2011年10月現在で全国に120の商業銀行があります。直近では、銀行口座を開設しているのは国民の4割程度、クレジットカードの所有率は1割程度と言われていますが、所得水準の上昇にしたがって増加が見込まれます。電子マネーも普及のスピードが加速しています。海外からの投資資金の呼び込みという観点では、11年末に格付け会社フィッチ・レーティングスが、12年1月にはムーディーズ・インベスターズ・サービスがそれぞれソブリン格付けを投資適格級に引き上げました。他にもスタンダード・アンド・プアーズ社の格付けは現在BB+ですが、その変更の方向を示すアウトルックはポジティブです。投資先としてのインドネシアの位置づけは今後上昇すると見ています。

■日本的サービス分野に期待

では、具体的に今後ポテンシャルの高い業種はどのようなものでしょうか。人口の多さや所得水準の向上といった観点でインドネシアを一大市場として捉えた場合には、あらゆる消費財・サービス業種に可能性があるといえます。日用品、食品、IT、教育、旅行、通販など、あげればきりがありません。工場立地としてみた場合、カギとなるのは現地で生産を担う人材の質ですが、人柄は総じてまじめで明るく、きちんと訓練を施せば、正確で細やかに仕事をこなすという評判も聞きます。最低賃金は、ジャカルタでは日本円で約13,000円前後で、最近は賃上げの兆候も表れつつありますが、為替レート次第では中国沿海部よりも低くなるケースもあります。またこれからは、工業団地などの事業用地や、駐在員が短期滞在するためのサービスアパートメントの確保、といったニーズが高まると見られます。

日本企業の成功例としては、既に生徒数が10万人を突破している公文教育研究会が知られています。最近では東芝が地元メディア会社と提携してファッション情報などコンテンツを組み込んだタブレット端末を発売するなど、新たなライフスタイルの提案が始まっています。

これからの方向性としては、小売や飲食、教育、サービスなどの分野で、日本的サービスを前面に打ち出していけるような業態や企業のポテンシャルが高いと思います。サービスの内容を磨き、接客の仕方を現地でのトレーニングにより移植することができれば、一気に広がる期待があります。

生産拠点の確保を目的とした進出であっても、市場をインドネシア国内に求めることのできる業種や、現地の人的資源を有効に活用できるビジネスであれば、成功の可能性は大きいのではないでしょうか。

■自立した消費大国を攻める

携帯を片手にコンビニで談笑する学生グループ(出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング2011年8月携帯を片手にコンビニで談笑する学生グループ
(出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング
2011年8月

インドネシアは天然資源が豊富で、国の構造としても輸出比率が20%強程度しかなく、2008年のリーマンショック後も成長率鈍化の程度はASEANの他国に比べて軽微で済みました。自立的に経済を回していける「大国」としての基盤があると言えます。巨大なマーケットがあり、外国の企業にとって魅力的な進出先です。故に世界中の企業が進出してきており、日本企業にとっても競争環境は厳しくなっています。ジャパンテクノロジーの威光はもちろん残っていますが、競争相手は欧米企業だけではありません。現地で求められる商品やサービスの開発や提供を怠れば、家電やファッションの世界でも存在を示す韓国、言語面でアドバンテージのあるマレーシア、製造業、金融サービス分野で直接投資の規模が大きいシンガポールといったアジア諸国の企業の後塵を拝する状況に陥りかねません。

とはいえ、インドネシア市場の成長期待は大きく、非常に有望なマーケットです。この国で成功するためには、大国だから売れる、という思い込みを捨てて十分なマーケティングをおこない、市場構造を的確に捉えなければなりません。その上で、現地で受容される独自性と強みを発見し、ビジネスチャンスに転換していくことが求められる段階に来ていると思います。

[ 2012/2/10 更新 ]

http://bizgate.nikkei.co.jp/special/emerging/business/index.aspx?n=MMBIb3000008022012

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About Uy Do

Banking System Analyst, former NTT data Global Marketing Dept Senior Analyst, Banking System Risk Specialist, HR Specialist
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