成長著しいイスラム市場~ハラル市場参入と日本企業の可能性~

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 国際事業本部 国際研究部研究員 武井 泉 氏三菱UFJリサーチ&コンサ
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国際事業本部 国際研究部
研究員 武井 泉 氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 国際事業本部 国際ビジネスコンサルティング室 コンサルタント 森下 翠惠 氏三菱UFJリサーチ&コンサ
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コンサルタント 森下 翠惠 氏

拡大するイスラム市場、世界人口の2割を超える

世界のイスラム教徒(ムスリム)人口は2010年に16億人(世界人口の20%以上に相当)、2030年には22億人(世界人口の25%)と、「世界人口の4人に1人がムスリム」という人口構成になると予測されている(米調査機関ピュー・リサーチ・センター)。ムスリムは中東諸国のみならず、人口の7割近くがアジア大洋州地域に在住しているほか、欧州や米国では高学歴・高所得のムスリムも多く、ムスリムを対象としたマーケットはその潜在性・可能性の高さから注目されている。特にイスラム教の厳しい戒律に則って加工がなされた「ハラル食品」に対する需要拡大が見込まれている。(図表1参照)

図表1 世界のハラル食品市場規模(2005-2010年)
(単位10億米ドル)
地域/年 2005年 2009年 2010年
(推定)
2010年
成長率(%)
アフリカ 139.5 150.3 153.4 2.1%
アジア諸国 375.8 400.1 416.1 4.0%
GCC諸国 39.5 43.8 44.7 2.1%
インドネシア 73.9 77.6 78.5 1.2%
中国 18.9 20.8 21.2 1.9%
インド 22.1 23.6 24 1.7%
マレーシア 6.9 8.2 8.4 2.4%
ヨーロッパ 64.4 66.6 67 0.6%
フランス 16.5 17.4 17.6 1.1%
ロシア 20.8 21.7 21.9 0.9%
英国 3.5 4.1 4.2 2.4%
オーストラリア 1.1 1.5 1.6 6.7%
北アメリカ 15.5 16.1 16.2 0.6%
米国 12.5 12.9 13.1 1.6%
カナダ 1.5 1.8 1.9 5.6%
世界のハラル食品市場規模 596.3 634.6 654.3 3.1%

(出所)“Executive Review of World Halal Forum Europe 2009”等よりMURC作成

■ハラル、ハラル食品とは

「ハラル」とは、シャリア法(イスラム法)に基づき「許されたもの」または「合法なもの」を意味し、ハラル食品は、ムスリムの人々がイスラム教義に基づき正当に口にすることができるものを指す。ハラル食品として認証されるためには、詳細かつ広範囲な規定を満たす必要があり、原料や製造ライン、保管、輸送、陳列、販売の全過程で非ハラルのものと物理的な分離が要求される。これらの厳しい条件を満たしたと認証された製品には「ハラル認証」マークが付与される。対象は食品のみならず、化粧品や医薬品、物流まで拡大している。

■ハラル対象製品とビジネスの可能性

ムスリムの消費者にとってハラル認証の重要性が高まっている背景には2つの要因がある。1つ目は、食品加工の技術の進展に伴い、加工食品の製造過程に使用される原材料が多肢に及び、一般消費者がハラルか否かを判定するのは非常に困難になっていることが挙げられる。2つ目は、ムスリムが人口の大半を占め、市場で販売されている食品の全てが基本的にはハラル基準に沿ったものとみなされる中東諸国とは異なり、アジアや欧州などの多民族・多宗教国家においては、豚肉やアルコール類を含め様々な食品が流通しているため、ハラル認証マークの有無が重要な選択基準となっていることが挙げられる。

■ハラル認証制度の課題

上述の通り、イスラム教義に従った調理や加工処理を施され、ハラル認証を受けた製品はハラルマークが付与される。認証の審査は基本的に各国のイスラム教の宗教団体・組織によって実施されており、ハラル認証の運用面は各国によって相違がある。また、ハラルに対する考え方やハラル認証の規格にもバラつきがある上、宗教的な教義と判断に基づくため、必ずしも成文化されていない。現在OIC(イスラム諸国会議機構)によりハラル規格の世界標準化への検討が行われているが、実現にはまだ時間を要すると言われている。(図表2参照)

■日本企業による認証取得の課題と機会

日本企業のハラル認証取得には、様々な障壁がある。前述のとおりハラル認証制度の国による規格の相違や、ハラルの未成文化以外にも、イスラム教自体への理解・馴染みがなく、ハラル市場への敷居を高く感じるという文化的な要因、また日本国内においてはハラル認証取得に必要なハラル専用製造ラインや倉庫等が未整備であるというインフラ面での要因、ハラル管轄組織に対応する人材やサプライヤーの確保が容易ではないという実務面での要因もある。

そのため、ハラル市場に参入した日本企業の多くは東南アジアを中心とした海外工場でハラル認証を取得している。既にマレーシアやインドネシアで認証を取得した企業によると、ハラル取得は当然の対応であり、特にムスリム人口が9割以上を占めるインドネシアにおいては、複数の大手食品メーカーがハラル未取得のサプライヤーとは基本的に取引を行わないと断言している。企業はハラル認証申請の際に組織化が義務付けられている「ハラル内部監査委員」の管理の下、日常的にハラル関係省庁・委員会や多数のサプライヤーとも情報交換を行っている。ハラル対応に関する疑問に対しては、関係省庁・委員会に必ず確認し、シャリア法やムスリムの習慣に勝手な解釈を加えぬよう現地のシャリア法専門家の判断を仰ぐといった配慮がなされている。

ハラル認証はトレーサビリティを要求されるため、本認証が製品の品質・安全性を証明するものでもあり、品質管理や技術改善に注力する日本企業にとっては、認証の取得は拡大するイスラム市場に参入する機会につながると考えられる。

[ 2012/1/31 更新 ]

http://bizgate.nikkei.co.jp/special/emerging/topics/index.aspx?n=MMBIb4000027012012

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About Uy Do

Banking System Analyst, former NTT data Global Marketing Dept Senior Analyst, Banking System Risk Specialist, HR Specialist
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